事例紹介

事例5JA菊池市 七城コントラクター利用組合(熊本県)

●組合設立の経緯(平成12年)

  • 個人作業、共同作業、外部コントラクター委託が並立していた
  • 規模拡大に伴う飼料作付面積の拡大により労働面が過重になった
  • 個人所有の収穫機等の設備投資が経営を圧迫していた
  • 隣接地域においてコントラ組織が先行して成功していた

 

七城コントラクター設立時の問題点

 

コントラクターと共同収穫組織
コントラクターと共同収穫組織
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●七城コントラクターの基本理念

  • 良質の受託作業を、極力安価で供給する
  • 受託作業の単価を将来にわたり維持する
  • 組合員の利益追求に最大限貢献する
  • 組合員ニーズを掘り起こす

●七城町コントラクターの特徴

  • トウモロコシの二期作体系
    〔毎年各2回の播種(3月・7月)と収穫作業(7月・11月)を請負〕
    ※2期作目を一日でも早く播種すると大きく育つ
  • イタリアンは作型に組み込まない
  • 収穫及び播種に関する作業機は個人所有にしない
  • 業務を委託する酪農家はできる限り収穫作業(収穫&運搬)に携わらない
  • コントラクターの運営、管理、経理、決算書の作成等はすべて自分で行う
    →農協へ委託することができるなら支援してもらうと良い。

 

組合概要

 

●コントラクター経営の改善に向けた取り組み

  • 利用単価低減の努力
  • 一日あたりの処理面積の拡大
  • GPSソフトの利活用による効率化
  • 耕作地の交換分合による平均耕作面積の拡大
  • 作業方法の改善による効率化

 

典型的な8月上旬の風景 一期作の収穫と二期作の不耕起播種が同時進行
典型的な8月上旬の風景
一期作の収穫と二期作の不耕起播種が
同時進行

サイレージ調整サイレージ調整

収穫作業の作業性
収穫作業の作業性
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[作業方法の改善による効率化]

  • バンカーサイロの複数同時詰め込みによる効率化
  • ダンプドア開閉方法の改善
  • GPS(スマートフォン)利用による作業圃場、詰め込み場所の確認
  • 運搬距離によるダンプ台数の変更
  • 経営体の設定に関する問題〔人格なき社団or任意団体〕
    ※七城コントラクターの場合は、任意団体と見なされ法人税の課税はされなかった。
ポイント

法人税の課税を踏まえ、よく検討する必要あり。

 

●コントラクターの利用効果(熊本県酪農家:(有)サウスウインド代表山下氏のケース)

  • デントコーンの栽培面積を拡大できた。
    (以前収穫面積14ha→現在40ha〔20ha×2作〕)
    ※土地の確保ができれば収穫面積80haも可能。
  • 機械装備の負担軽減
  • 作業負担軽減
ポイント

コントラクター利用の場合と自己実施の場合のコストの違いを計算する

 

 

ダンプドア開閉方法ダンプドア開閉方法

コントラクター利用による経営改善のメカニズム

自給飼料多給効果自給飼料多給効果
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●設立時に行うべきこと(機械導入にあたっての損益試算シミュレーション)

  • 作業データ及び収支データからコントラクターにおける大型自走式ハーベスタの規模別収支を試算する。
    七城コントラクターの事例は以下のとおり。
〈助成金(半額)がある場合〉
   面積あたりの作業料金水準が6,500円/10aだと、年間80haが分岐点
〈助成金なしの場合〉
   面積あたりの作業料金水準が6,500円/10aだと、年間160haが分岐点
     七城コントラクターは設立当初は助成金なしでは機械更新が困難な80ha程度の収穫面積であったが、現在は200ha程度と自力更新できる規模に達している。

 

損益試算グラフ損益試算グラフ
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[作業料金単価]

(1) トウモロコシ刈り取り作業(組合員) 6,500円/10a
(2) トウモロコシ刈り取り作業(員外) 7,500円/10a
(3) 種まき作業(組合員) 1,000円/10a
(4) 種まき作業(員外) 1,600円/10a

●GIS(地理情報システム:Geographic Information Systems)

≪概要≫

  • 農地の面積、耕作者の情報を航空写真及び地図と結びつけて、PC上に再現し、位置や場所から様々な情報を集計分析するシステム。

ダンプドア開閉方法システム画像

≪導入経緯≫

  • コントラクターの播種、収穫面積の拡大に伴い経理事務量が大幅に増加。
  • 対象圃場数が約400枚。年間に2回の播種及び収穫作業を実施することから延べ1,600枚の圃場管理が必要。
  • 手作業での集計管理は困難。
  • 補助事業を活用し、平成18年にGISを導入。

≪現行使用ソフト≫

  • 各種GISソフトを検討した結果、使い勝手及びコスト面から『地図太郎Plus』に決定。(東京カートグラフィック社製)

≪GIS利用のメリット≫

  • コントラクターや営農集団の事務処理が簡素化できる。
  • 面積が自主申告ではなく農地台帳のデータを基本としており、受益者にとって平等となる。
  • 一度のインプットで何回も利用することができる。
  • コントラクターとして安価で良質なサービスを提供できる。

全国農地ナビ画面全国農地ナビ画面

≪GISの運用手順≫

  • 農地情報(形状、面積)の取得、データ化
    ※『全国農地ナビ』を活用  (リンク先) https://www.alis-ac.jp/
  • データから作業圃場を選択
  • 収穫又は播種予定圃場を作業者に渡す
  • GPSデータロガーに記録した機械類の移動データを重ねる。
    ※GPSデータロガーとは、収穫機や播種機の動き(日時、座標、スピード)を15秒間隔で記録するもの。
    このデータが作業記録となる。
  • Excelで面積集計
  • 作業記録に基づき経理担当者が精算書を作成する

GPSデータロガーGPSデータロガー

作業日誌作業日誌
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精算書精算書
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